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Interview 研究の成果を社会に還元する

WizWe総研 主任研究員 丹野宏昭

Q. WizWe総研とは何ですか?

WizWe総研の役割は、行動科学・社会科学的な研究手法に基づいて、サービスの最適化や戦略設計の基礎情報を構築することです。主な研究手法は「データ分析」と「文献研究」です。また、研究によって得られた知見を事業に活かすだけでなく、論文として取りまとめ、社会的な価値創出にもつなげていくことを目指しています。

Q. これまでの経歴を教えてください。

大学で心理学を学ぶ中で、友人関係や恋愛関係といった身近な対人関係を科学的に捉えることに興味を持ち、社会心理学のゼミを履修。大学院では社会心理学を専攻し、博士号を取得しました。大学院卒業後は大学教員として10年以上、社会心理学や心理学研究法などの講義を担当しながら、自身の研究を進めていました。専門は、コミュニケーション研究や教育場面でゲームを活用する研究などです。たとえば、『人狼ゲーム』では、相手に信じてもらうための説得的コミュニケーションが必要である点に着目。『人狼ゲーム』を、営業活動やプレゼンといったビジネスの場における説得的コミュニケーションを鍛えるプログラムとして活用できるかを研究しました。その結果、一定以上の成果が見込めることがわかり、実際にビジネスパーソンを対象にした講座を実施したこともあります。そして、2021年4月からWizWe総研の主任研究員を務めています。

Q. 大学での研究と、WizWeという企業での研究に違いはありますか?

研究手法は基本的に同じなので、これまでの経験を現在の業務に活かすことはできていますが、大学では自分自身で研究テーマを決めるのに対して、WizWeではテーマや仮説が設定されるというところに違いがあります。そして、大学での研究は、基礎研究の場合は特にですが、なかなか研究結果が社会で実践されないことも多いのに対して、WizWeではすぐに企業活動に活かすことができ、社会や人の役に立っていることを実感しやすいという違いもあります。また、扱うデータにも違いがあります。大学での研究では、テーマに沿って、他の要因が入り込まないようにして収集したデータなので、言わば実験室的なデータを扱っていましたが、WizWeで収集できるのは「現場の生きたデータ」。ノイズが多くて扱いにくいという反面、研究結果を現場に還元しやすいとも言えます。ノイズに関しては、データをより多く集めることで確度を上げることもできますし、なるべく等質なデータを選んで分析することで確度を上げることもできるので、そういったデータの違いを念頭において、慎重に分析を進めています。

Q. WizWe総研は、事業に対してどのような価値を提供しているのでしょうか?

WizWe総研の役割のひとつに「サービスの最適化」というものがあります。たとえば、学習者様に対するサポートのタイミングや、商品開発における学習プログラムの設計に関して、WizWe総研を創設する前は、現場の担当者の考えや経験に基づく感覚で行っていました。しかし、WizWe総研では、学習の成果をデータ分析することで、それがどこまで妥当なのかを検証し、修正のきっかけをつくっています。実際に、担当者の感覚だけでは、やはり妥当とは言えないケースがあることがわかっています。その要因のひとつは、学習者様の個人差が大きいことです。ご本人の語学レベルやモチベーション、日常の学習行動、所属されている企業の環境などは、学習者様によって様々。逆を言えば、こういったデータを細かく収集・分析することで、確度を上げることが可能になると考えています。目標から遅れている人に対して、いつ、どんな風にアプローチすることで、最適なサポートができるのか。学習者様の語学レベルや目標値に対して、どの学習コンテンツが最適なのか。お客様にもご納得いただけるよう、WizWe総研は、ファクトに基づいたサービスの最適化を行うための研究知見を導出しています。

Q. データの収集や分析はどのように行っているのでしょうか?

学習者様の学習行動データは、習慣化プラットフォーム「Smart Habit」で収集が可能です。また、学習者の内的な要因が学習継続や成果に関わっていると考えらえるため、心理的データを取得するためのアンケートを実施しています。以前から学習者様にはアンケートをとっていたのですが、それはあくまでもサービス改善を目的としていたもので、研究をするためのデータとは質が異なるため、WizWe総研でアンケートを改めて設計しています。これにより検証できたことの一例を挙げると、法人の語学研修においては「上司に怒られるから」「習得しないと昇進できないから」といったものは動機づけとして弱い一方、「語学が好きだから」「社会人として習得しておくべきと考えるから」といったものは動機づけとして強いことがわかっています。このことから、学習プログラムの開始前に上記のようなデータを取得できていれば、学習者様が途中で離脱しないように、プログラム開始後のサポートをあらかじめ計画し、サポートの効果をより高めることが可能になるのです。

Q. 文献研究としては具体的にどのようなことを行っているのでしょうか?

こちらも一例を挙げると、法人の語学研修において、研修担当者様の熱意が学習者様の行動に深く関わっているという仮説を、データ分析によって導いたことがあります。そこで、先行研究で類似する事例がないか、様々な文献を研究。すでに論文として発表されているものが複数見つかり、私たちの考えた仮説の裏付けができため、実際に学習プログラムの運用に活かすというところにつなげることができました。このように、心理学や行動経済学などのアカデミックな知見に基づいたサービスの実用化のために、文献研究は重要であると考えています。

Q. WizWe総研の今後の展望を教えてください。

現在データベース化に必要なシステム構築を進めており、今後事業はますます拡大していくため、社内で得られるデータは加速度的に蓄積されていくことが期待できます。そこで新たな知見や発見を導出し、自社サービスの改良につなげることで、「習慣化」という新たな価値を社会に提供する後押しをしていきます。また、研究内容をまとめた論文を学会で発表・投稿し、第三者のチェックを受けることで、その内容に対する信頼性を高めるとともに、WizWe総研が学術界から認められる研究機関になることを目指しています。WizWe総研での研究が未来の常識をつくり、また次の研究の基礎となれば、うれしいです。

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